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縫える人縫えない人。

さてさて、はんてん作りも二転三転してます。
蓋を開けてみると、「縫えない」お母さんが7割ってのが現状でした。

と書くと、「私も苦手です~」って日本のお母さんも言う人がいそうですが、そのレベルではなく、「知らない」のです。
日本の場合、どんな下手くそでも、家庭科でやるから一応縫ったことがあると思うのですが、生まれてこの方縫ったことがない人もいるくらい。
学校で教えないらしいし。
いやーーーーーーーーー、びっくりした。
そういえば、スペインに東急ハンズみたいのがないなぁって思ってたんですよ。
手作り大好きっ!て人あんまり老人以外では見ないし。
そうそう、25cm四方のフェルトなんて売ってないんですよ。業務用はあるけど・・・。
ちょっとした細工をするのに、しょうがないから日本から送ってもらったこともあります。

んで、スペイン人の友人に、この話しをしたのです。驚いた~って。
そうしたら、なんて言ったか。

「そりゃ、やっぱりフランコのせいだと思うわぁ。」とひとこと。

フランコというのは、スペインを1936年から1975年まで独裁政権で牛耳っていた奴です。
「お国柄」で書いた「自由でラテン気質のスペイン人」って印象とは180度違う生活を強いられていたんですよ。
今でこそ独、英、仏、伊とともに「ヨーロッパ」として脚光を浴びてますが、例えば第二次世界大戦の時にスペインは参戦すら出来ない状態にあったんです。
国内は内戦でずたボロ状態。(もともと貧乏な国だったのに、疲弊して貧乏のどん底に・・・)
ゲテモノ食べないこの人達が、食べるものなくて、その時には馬も猫も犬も食べたそうな。
スペイン人が、アジア人は馬を食べる、犬を食べるってことに、「信じられない!」って必ず言うのは、過去にやむなく食べた経験を隠す為だと言われてるし。
最終的勝利者である、フランコ将軍は超右翼。
で、スペインはファシズムの道を1979年までまっしぐらだったのです。

ま、ここら辺は話すと疲れるんで、興味ある人は「スペイン内戦」とか「フランコ時代」でググって調べて下さい(あしからず 苦笑)

で、彼女の言った「フランコのせい」って所に戻るとですね、
フランコはスペイン人達に対して、「自動的警察機構」というものを強いたんです。
英語で言うと、「オート・ポリス」ポリスですが、オートです。
これは、その時代、個の尊重はまったく許されず、「家族」が最小単位。
フランコの決めた「理想的家族」のプロトタイプにあわせて生きるよう強制されてたんです。
毎週日曜日に強制ミサで「あるべき家族」を繰り返し教え込んで。

父として、母として、子として、美しく役割を完璧に果たすことを要求されたわけですが、
すると、一応ちゃんと模範的家族を演じられるようになってくるんだそうで。
すると、そうじゃない家族、秩序を乱す者が許せない気持になり、御上にちくる人間が
必ず出現するのだと。
あとね、子供が罪を犯すと、父が逮捕されて殺されたので、みんな必死。

この時「母として」の姿の中に「お裁縫する」ってのがあったらしくて、この時代の人は全員縫い物が出来るのだって。

そして、フランコが死んで、ファシズムが終わって、人々が自分を初めて解放した時、
それまでの抑圧されたものが一気に弾けて、「個の尊重」を飛び越えて行きすぎの「わがまま」も許すほど、「自由」に狂ってしまったのでした。
で、「縫うも自由縫わぬも自由」という時代に入った女性達は、多くが縫うのを辞めたんだって。
裁縫って考えただけで、家に閉じこめられてチクチクやってた時代を思い出しちゃうとかで。

うちの父は、戦時中の辛い時期を思い出すからと、長いこと混ぜご飯を嫌がりました。
こんな美味しい炊き込みご飯を、どうして?と子供の頃、私はよく思ったものでしたが、だからなんとなく「裁縫は嫌」って気持ちもわかる。
しかし・・・、予想外の話だったな~。
まね、あくまでも一説なんだけど、信憑性ありありだわぁ。
1979年までファシズムってことは、僅か27年だから傷跡はまだヒリヒリなんでしょうね(涙)
計算すると、ちょうど縫うのをやめたお母さんに育てられた人達の世代だもんなぁ。

縫えないなら、衣装欲しがるなよ・・・と密かに思ったんだけどね(溜息)
今さら後にも退けないし・・・。



でもね、そんな中でもいるもんですねぇ。
スペイン人の「大好き手作り派」(笑)
たった一人だったけど。
家を尋ねたら、家中手作りものに溢れてました。
クロスステッチ、クッションカバー、子供のおもちゃ・・・おお~なかなかの正当派!
きっと、彼女のお母さんはフランコに強制的に縫い物させられてたんじゃなくて、本当に縫うのが好きだったに違いない。
彼女も小さな頃から、母の縫ってる姿をいいないいなぁって見て育ったんだそうで。
やりたくてやりたくて、色んな人に教えてもらいに行ったとか。
なんだかちょっと嬉しくなりました。
どんなことがあっても、「作るのが好き」という人間は絶えないもんなのだなぁと。

ということで、一着はポルトガル人のお母さんが自分の息子の分は縫うと。
二着はイギリス人のお母さんが、手術後だから体力的にこれだけしか・・・と恐縮しつつ縫ってくれることに。
一着は、私が手縫いでもう縫ってしまい。
(みんな出来ない出来ないってあんまり言うんで、どのくらい時間かかるか実際縫ってみたのっす。一晩でほぼ出来上がってしまった。日本人にはきっと簡単な縫い物なんだろうな)
残り16着を、彼女がミシンで作ることになった。もちろん私もヘルプに行き、縫えないお母さん達は午後くうまと彼女の娘の面倒を見るってことで(苦笑)
by africaespa | 2006-06-02 03:33 | 母のつぶやき

子供と一緒に楽しむ南スペイン。


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